自己分析何からやるの?という人向け|「働く目的を明確にする」やり方【Step1】

自己分析をしたいが「何からやるかわからない」「やり直したい」「正しい手順を知りたい」という方向けに自己分析を7つのステップに分けてお伝えします。
自己分析を始める前に自分は「なぜ働くのか?」を考えると、今やるべきことが見えてきます。
初回ですが過去の振り返りからはしません!まずは「働く目的」を明確にすることからスタートします。

理由は大きく2つあります。
将来の進路やキャリアの方向性が見えてくる
現時点での自分自身の考えや大切にしていることを口に出したり、書き出すことでキャリアや進路の方向性、大切にしている価値観が見えてきます。自身の考えや価値観を知ることはこれから自己分析を進めるうえで大切な土台になります。
面接対策になる
企業によっては、選考で出会った学生の価値観や考え方、どのようなビジョンを持っているかを確認をしたいと考えています。学生の思考やキャリア感を、自社の経営理念や社風にフィットしているかすり合わせをするために、働く理由を確認しているケースがあります。
そのため、この自己分析完全攻略プログラムでは、いきなり自分の過去を振り返ることはせず、まず最初に「なぜあなたは働くのか?」という問い掛けからスタートします。
あなたは「何のために働きますか?」

「生きていくため」「育ててくれた母への恩返し」・・・駄目ですか?

問題ないよ。自己分析は直感で正直に答えることが大切です。

「なぜあなたは働くのですか?」と質問をすると「夢を叶えるため」「両親への恩返し」「社会貢献をするため」という回答もあります。人の考えや心は人それぞれ違いますが、この問いだけはたいてい”まじめな答え”が返ってくることが多いです。
おそらくこの問いは簡単なようで、実は私たちの心の奥深くにある何かが絡んでいるからだと思います。
「自分は何のために働くのか」を明確にする方法
書き方のポイント
結論は20文字以内で簡潔に書く、理由はできるだけ詳しく書いてください。たとえば、結論が「自立するため」であったとしたら、理由は「母子家庭のため、母親が一生懸命働き、これまで自分の教育費を出してくれた。これからは自分が働き、早く親孝行をしたいと考えているから」などと、できるだけ詳しく書いてみてください。
あなたはなぜ働くのか?
結論(20文字以内で)
なぜ働くのか、その理由を書いてください。
理由(できるだけ詳しく)
考えすぎず直感で書き出すことが大切ですね。思ったとおりに書いてみますね。

どんな結論になりましたか?「生きるため」であれば、アルバイトをする理由と同じかもしれません。しかし、理由を詳しく書いていくうちに、”アルバイトは短期、社会人として働くことは長期、自分のこれからの人生の大半を占めるものなのに、こんな当たり前の結論や理由でいいのかなぁとモヤモヤしてきた気持ちにまずなっていただきたいのです。
書き出した内容を見て、感じたモヤモヤ感や違和感を大切にしてください。

3人のレンガ職人の事例

働く目的を考えるうえで「7つの週間」という書籍の事例をお伝えします。
ある旅人が、建設現場で3人のレンガ職人に出会います。それぞれに「あなたは何をしているのですか?」と尋ねたところ、次のように答えました。
職人Aの答え:「見てわかるだろう、レンガを積んでいるんだよ。」
作業そのものに集中しているタイプ。
働くことがただの労働になっていて、やりがいや目的が薄まってしまっている。
職人Bの答え:「家族を養うために働いているんだ。」
目的意識はあるが、個人的・短期的な視点。
生活のためという理由で働いているが、仕事自体の価値や意義までは考えていない。
職人Cの答え:「私は人々が祈るための大聖堂を建てているんです。」
高い目的意識とビジョンを持って働いている。
日々の仕事が、社会や他者に与える影響を理解し、誇りと情熱をもって働いている。
3人の職人がいましたが「あなたはどのタイプのレンガ職人ですか?」あるいは「どのタイプのレンガ職人を目指したいですか?」
この話は、同じ仕事でも「どんな目的意識を持っているか」で意味が全く変わることを教えてくれます。7つの習慣でも「自分の人生における最終的な目的を明確にすること」が成功の基礎であると説いています。
このように、仕事の中に深い意味と目的を見出すことで、人生の質そのものが変わります。
なぜ働くことの意義は人によって違うのか?
同じことをしている3人の職人に同じ問いかけを行ったのに、なぜ違う答えが返ってくるのでしょう。
「仕事とはお金を得るためのもの」
「仕事とは作業そのもの」
「仕事とは希望を持ち何かを成し遂げようとする手段」
という3人の、”心の中にある何か”が違うからだと考えられます。こう考えると仕事とは、とても奥が深いものだということがわかってきます。
人生は100年時代。私たちの人生の大部分を占めるのは仕事です。
その選択を人任せにしてはもったいないので、あえて「何のために働くのか?」を明確にし自分自身の言葉で語ることができるかどうかが大切です。
「なぜ働くのか?」を明確にすれば、その仕事に就くために「これから自分は何をすべきか」もおのずと見えてくるはずです。
自分の心の中にある大切な事柄に、自分自身が気がつくことが重要です。

働くことへの自分の欲求レベルを確認しよう
働く目的を心理学の人の欲求理論と照らし合わせて考えることで、「何のために働くのか?」がより明確になってきます。ここでは、心理学者マズローの理論に基づいて自分自身の欲求を理解して自己分析につなげていけるようにしたいと思います。
マズローの欲求段階説
アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した「欲求段階説(欲求5段階説)」は、人間の欲求には階層があり、低い段階の欲求が満たされると、より高い段階の欲求を満たそうとすると考えられています。ピラミッド型で示されることが多く、下から順に以下の5つの欲求があります。
1.生理的欲求 (Physiological Needs)
生命維持に必要な、最も基本的な欲求です。食事、睡眠、排泄、呼吸などがこれに当たります。この欲求が満たされないと、他の欲求を考える余裕はありません。
2.安全の欲求 (Safety Needs)
生理的欲求が満たされると生まれる欲求で、身体的・精神的に安全で安定した生活を送りたいという欲求です。病気や事故からの安全、経済的な安定、安心できる住環境などが含まれます。
3.社会的欲求(所属と愛の欲求) (Love/Belonging Needs)
安全の欲求が満たされると、他者と関わりたい、集団に所属したい、愛されたいという欲求が生まれます。家族、友人、組織などへの帰属意識や、愛情を求める気持ちが該当します。
4.承認欲求(尊重欲求) (Esteem Needs)
社会的欲求が満たされると、他者から認められたい、尊敬されたいという欲求が生まれます。名誉、地位、評価、そして自己肯定感や自律性といった、内面的な承認も含まれます。
5.自己実現欲求 (Self-Actualization Needs)
これまでの4つの欲求が満たされた後、最も高次の欲求として現れるのが自己実現欲求です。自分の持っている能力や可能性を最大限に発揮し、自分らしく創造的な活動をしたい、最高の自分になりたいという欲求を指します。
マズローは、人間はこれらの欲求を段階的に満たしていくことで、絶えず自己実現に向かって成長すると考えました。
図
あなたの結論は、このマズローの法則の中の何段階に属していますか?
理論と照らし合わせると、自分の考えや価値観がより明確に見えてきます。

多くの学生が答えられない最も肝心な質問
次はあなたの書いた理由について聞いていきたいと思います

理由を聞かれると恥ずかしいですね。

「何のために働くのか?」という問いに対し、私がこれまでに出会った学生たちの回答は、大きく分けると次のような3つの意見に分かれます。
自立するため
母子家庭に限らず、親にこれ以上負担をかけられないと考えるから
将来を見据えて
結婚して家庭をつくるなら、お金は必要だから
自己実現のため
できれば将来は海外で働く、いつか起業するなど、高い理想を持っているから
エントリーシートに書くときや面接で答えるととき、働く目的について「自立のため」「親にこれ以上負担をかけられないと思うため」と書いても決して恥ずかしい答えではないことがわかります。しかし、私が知る限りでは、5割くらいの学生が「自己実現のため」と書き、そう面接で答えています。
もし、あなたがそう書いたなら、おたずねします。
本当に、あなたの働く理由は「自己実現のため」なのでしょうか?
格好つけて「自己実現」と書いているのではないでしょうか?
気をつけなければならないのは、そんな学生に対して、面接官がさらなる質問(追求)をかけてくることです。
「そのあなたの自己実現の中身は何ですか?」
的確に答えられないが学生は、実にたくさんいます。
そんな学生に対し、いよいよ圧迫と感じるような深堀りが始まることがあります。
面接官は、学生をわざと困らせるために、なんで?
どうして?と矢継ぎ早に質問するわけではありません。書類選考時から、あなたに素直な関心を持っているからです。だから面接ではあなたを採用する動機づけを見つけるために不明な点を解消していきます。
あなたの「自己実現」の中身は何ですか?
そもそもあなたにとって「自己実現」とは何なのでしょうか?
「自分のやりたい仕事ができること」が自己実現であると考えるのは、あまりにも楽観的、飛躍しすぎかもしれません。
自己実現という言葉は、確かに響きも格好もいいし、若い皆さんにとっては単に憧れのみならず、もしかしたら誰でも果たすことのできる簡単なことのように思えるのかもしれません。
しかし、真の意味での自己実現とは、もっともっと難しく、たくさんの努力や忍耐の先にあるものだと私は思います。
“欲求”という言葉を調べてみると、
・ 欲しがり求めること、願い求めること
・ 生理的・心理的に必要なものが足りないとき、それを補うための行動を起こそうとする緊張状態
・ 動物や人間を行動に駆り立てる原因
などがあります。
最後の説明が、一番わかりやすいかもしれません。
「動物や人間を行動に駆り立てる原因」が欲求ですから、あなたにとっての働く目的が、“生活=生きるため=自立”であるならば、卒業までに安定した就職先もしくは自分が納得した先を決めたいと思うはずです。
逆に言えば、生きるために働くと考えるならば、どんなに苦しい就職活動でも、最後まであきらめないで頑張ることができるのではないでしょうか。
だからこそ、あなたにとっての働く目的が「自己実現のため」という言葉になる場合には、面接官からその内容を問われる場合があることを想定して、現状どのように考えているかをきちんと答えられるように準備をしておきましょう。
重要なことは“地に足がついている学生”かどうか
真の意味ではなく、格好をつけるために「自己実現のため」と書いたあなた。
「生きるために働きます」
「家族の負担を軽くするために働きます」
という答えが、実はあなたにとっての本当の答えならどうしますか?
「生きるためにがむしゃらに働きます」と答えて何が悪いのでしょうか。
心ある面接官なら、目の前で素直に答えている、地に足がちゃんとついている学生のことを、”この学生ならしっかり仕事に耐えて、弱音を吐かずに頑張ってくれる学生ではないか”という見方をすると思います。
「生理的欲求」こそ、いざとなったら強いものです。自分で自分の食い扶持を確保するということですから、漠然と「自己実現のため」と書いてしまった人は、この精神面だけでライバルに負けてしまいますよね。
「何のために働くのか」をまだぼんやりとしか考えていなかった皆さん。
この質問は、必ずや問われる質問だと心得ておきましょう。
決意表明のつもりで、この問いからしっかり自分の気持ちを確認し、「自分軸」をはっきりと見定めてください。
ただ、もう1つ大事なことがあります。
働く目的は”欲求”だけでは決められないことがあるということです。
就職活動を成功させるためには、自分の”価値観”をも見極めることが必要だからです。
しかし”価値観”とは、「いかなる物事に価値を認めるかという個人個人の評価的判断」ですから、人によっては”価値観”と”欲求”が必ずしも一致しないということが起きてきます。
たとえば、公務員のように営利目的ではなく人の役に立つ仕事がしたい(=これがあなたの価値観?)、しかし、たくさん給料が欲しいし、早く昇給して将来は大金持ちになりたい!なんといっても世の中はお金がすべてだから(=これがあなたの欲求?)と考えているような人の場合です。
こうなると、ぼんやり考えてもわからないはずです。
それほど、真の意味での”欲求”と”価値観”を見極めることは難しいことなのです。
あなたの”欲求”と”価値観”が、あなたの中でどんなふうに存在しているのか、これからの作業で少しずつ明確にしていきましょう。
ここまで読んだあなたは、今すぐにでもワーク1の結論と理由を書き換えたい!と思うかもしれません。
でもそれは待っていただけますか?敢えてそのままにして先に進んでください。そして7つのワークがすべて終わったあとにもう一度、ワーク1に戻り、改めて考えてみてください。おそらくそのときには“私のライフワークはこれだ”と気づきはじめているはずですから、恥ずかしがることなく、胸を張って言える結論と理由に変わるはずですよ。
なぜここまでやるかというと、
冒頭の働く目的を明確にする理由につながりますが、
①将来の進路やキャリアの方向性が見えてくる
②面接対策になる
からです。
「働く目的を明確にする」ことは自己分析をするうえでとても重要なポイントなのです。